中国・習近平政権は以前から台湾(*1)を武力を使ってでも併合する、という趣旨の発言をしているが、その中国共産党はいよいよ台湾への実際的な軍事侵攻の準備を開始した模様である。これについて作家で中国ウォッチャーの石平氏による解説を紹介したい。
昨年12月から今年1月にかけて中国各地で新型コロナウィルスの感染例が出ている。そして奇妙なことに新型コロナウィルス感染が1例でも発見されると各地方政府はただちに「戦時状態宣言」を発令しているのである。
時系列に沿って事実を並べる。
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<中国各地で「戦時状態入り」と続々宣言>
◇12月8日、四川省成都市内在住の夫婦がコロナ感染と判明されたことを受け、四川省政府は「迅速に戦時状態に入る」と宣言。
◇12月10日、黒龍江省東寧市内で新規感染者が一人見つかったことで、東寧氏政府は「戦時状態入り」を宣言。
◇12月11日、黒龍江省塔河県内でロシアからの帰国謝の一人が感染確認されたことで塔河県政府は12日に「戦時状態宣言」を公布。
◇12月20日、遼寧省大連市で新規感染例一つが確認されたことで市政府は当日のうちに「即時に戦時状態に入る」と宣言。
◇12月26日、北京郊外の北京市順義区で新規感染者二人の確認を受け、市政府は順義区全区の「戦時状態入り」を宣言。
◇12月30日、遼寧省省庁所在地の瀋陽市で29日から二人の新規感染者が見つかったことで市政府は「全面戦時状態入り」と宣言。
◇1月3日、河北省石家荘市で新規感染者一人が見つかったことで、市政府は「迅速な戦時状態入り」と宣言した。
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大連にしても瀋陽にしても一千万規模の大都会である。このような大都会で一人か二人の感染者が出ただけで「全面的な戦時状態入り」を宣言するのはなんとも強烈な違和感がある。誰でもそう感じるだろう。
イギリスのロンドンなどははるかに多くの感染者が発生しているが別に戦時状態の宣言はしていない。東京でも緊急事態宣言が出てはいるが、戦時状態などという表現は使われない。しかし中国の場合は一人か二人の感染者が出ただけで戦時状態宣言と言うのだ。こんな言葉は普段あまり使わないものであるが故に大げさであり異様に感じられる。
中国の場合は各地方政府の勝手な判断で「戦時状態宣言」を出すことなど絶対にできない。各地方政府が一斉にその言葉を使うとすれば、それは中央政府の指示があった、ということを意味する。中央政府の指示に対してはどの地方政府も統一行動をするのだ。
中央政府とはすなわち習近平政権である。ならば習近平政権はいったい何の為にこのような際どい言葉を使わせたのか?その意図はどこにあるのだろうか?
その謎解きは人民日報・海外版(2021年1月5日)の1面トップに掲載されたニュースの中にあった。当該ニュースで
「習近平主席は中央軍事委員会の2021年第1号命令に署名した」
と伝えられている。
それはどういうことなのか?
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<中国各地「戦時状態宣言」の隠された意図>
◇習近平は1月4日、共産党中央軍事委員会主席として「中央軍事委員会2021年第1号命令」に署名し発令された。これは全軍に対する「訓練開始動員令」である。
◆人民解放軍全軍に対し「全時間帯で戦争に待機し、いつでも戦える体制の確保」の為に軍事訓練を急ごうと号令をかけた。
★「戦時状態宣言」の本当の意図、本物の戦時状態の到来に備えて、国民に「戦時状態」に慣れさせる為の心理的戦争準備であると考えられる。
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前述の各地方政府の戦時状態宣言の不思議さとこの習近平の命令をリンクさせて考えると、習近平政権は今年に入って台湾侵攻を念頭に置いて着々と戦争の準備をしているものと推測することができる。(*2)
国民に対して「戦時状態」という言葉や「戦時状態」という雰囲気・空気に慣れさせるための心理的戦争準備ではないか、と思われるのである。なぜなら、新型コロナウィルス感染が一人か二人出ただけで「戦時状態」を宣言するのはどう考えてもおかしく不自然であるが、今年年頭の習近平の第1号命令とリンクさせて考えれば筋は通るのだ。
どうやら中国共産党政権は戦争の準備を進めているようである。特に今年になってバイデン政権がスタートした場合、習近平からすればバイデン政権は中国が台湾に戦争を仕掛けても強く出られないし強く出ないだろうと考えられている。バイデンは中国の邪魔はしないだろう、ということだ。
実際の台湾侵攻がいつになるかはともかくとして、中国がいよいよ台湾に対して軍事行動に出る可能性がリアルに高まったということである。
我々も留意して監視してゆく必要があるだろう。台湾は親日国でありアジアに於ける大切な仲間である。
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(*1)
歴史上、中国が台湾を統治したことは一度もない。台湾は台湾である。だから中国共産党が宣う「台湾は中国の一部である」という言説自体がそもそもでたらめなのである。実に図々しい話なのだ。
(*2)
筆者注:尖閣諸島に関連するものである可能性もゼロではないだろう。